2022年9月15日発行 第241号

東郭先生と狼

 30年ほど前に中国の深圳に足を踏み入れて以来、中国の研究を続けています。その中で、中国人の友人たちとの交流は刺激的で学ぶところが多く、私の大きな楽しみのひとつです。日本人同士の議論の中では出てこない、想像もしていなかったような意見や思考方法に触れることができるのです。
 中国の子どもたちが学ぶ教科書の中には、とても興味深い童話があります。それは、「東郭先生と狼」の話で、中国人のメンタリティーの理解を助けるとともに、現代日本人への警鐘にもなる話だと思っています。そんな思いで、この童話を紹介いたします。
 善良な思想家である東郭先生は、 本の詰まった袋を背負って道を歩いていました。そこへ、猟師に追われた狼が助けを求めてきました。東郭先生は、慈悲の心でその袋の中に狼をかくまって、猟師から救ってやりました。
 しかし、その狼を袋から出してやると、驚くことが起こりました。狼は「あなたは善人ですね。善人なら善人を貫いて私の希望をもうひとつ聞いてほしい。私は腹が減っているので、あなたを食べさせてほしい。」と迫ってきたのです。
 この状況に博愛主義の東郭先生はひどく困惑していました。そのとき、ひとりの農夫が通りがかり、いかにすべきかを相談しました。農夫は狼に「本当にこの袋の中に入れるのかね。」と尋ね、もう一度袋の中に入らせました。そして、袋の口をしばり、持っていた鍬で狼を殴り殺しました。そして東郭先生に「悪者に情けをかけるなんて馬鹿なことをしてはいけない。」と戒めました。
 この結末は日本の教科書検定では通らないでしょうね。日本の教科書なら、「農夫は、恩を仇で返すようなことはよくないと狼を説得し、狼は改心して東郭先生の弟子になりました。」となることでしょう。
 30年以上没落を続ける日本国の子どもたちにとって、どんな教科書が必要なのでしょうか?理想を教えることは大切です。しかし、同時にその理想と現実とのギャップを埋める方法をきちんと示してくれる実践的教科書、私はこれを切望しています。
CPS総合法務事務所
所長 加藤健治

クレームに対する適切な対応方法は?(その7)

 引き続き,「クレーム対応の仕方」についてです。今回は,悪質クレーマーに適切に対応できるための体制構築の続きです。職員が心身に支障を生じないよう,社内に予め,クレーム対応体制を構築しておくことが大切です。体制構築においては「クレーム対応の目標を誤らないようにすること」が重要です。
 悪質クレーマーは,正当な理由を示されても,納得しません。納得してもらって解決することをクレーム対応の目標としていると,悪質クレーマーに納得してもらえない担当者は無能な人間だということになってしまいます。反対に,悪質クレーマーを特別扱いして悪質クレーマーに満足・納得してもらった担当者は有能だということになってしまいます。これを続けていると, 現場担当者は自腹を切ってでも,その場をうまくやりすごそう,という方向に動いてしまいます。そのため,悪質クレーマーに立ち向かう担当者を無能扱いしないよう,クレームの解決を目標にしないことが必要です。
 …とはいっても,早めに解決できるなら,悪質クレーマーへ多少の特別扱いをしても企業経営の効率性,など全体でみたら,許される場合もあるのでは?と思うのではないでしょうか。確かに,全く画一的な取り扱いをせよ,という趣旨ではありません。なぜなら,それぞれお客様との取引は同じものではないからです。 しかし,大事なことは,悪質クレーマーに特別扱いをすることが,他の多くの大変善良かつ企業にとって真に有り難いお客様に対して,失礼になる,という意識を持つことです。自分が客だったら,こんなにその企業を愛し,好んで商品も何度も買っているのに,自分には何のサービスも無く,たまたまその商品を1度買いに来て,正当な理由もないクレームを言った客には,特別なサービスがある,と知ったら,がっかりですよね‥
 社会的にみて,毅然と公正,公平な取り扱いをすることこそが企業の価値を高めます!
 次回も,引続き,クレーム対応体制構築のポイントをお話ししたいと思います。
岐阜県多治見市大日町21 大日ビル3号
多治見ききょう法律事務所 弁護士 木下貴子

個人情報について

 個人情報とは、 氏名・住所・生年月日など特定の個人を識別できる情報のことで、プライバシーとは、私生活などで他人や社会に知られたくないことや、干渉されたくないことなどですが、昨今は、「やれプライバシーが・・・とか、やれ個人情報の保護だー」などと、世知辛い世の中になりました。確かにDVや虐待などで住所や氏名を特定されて、命の危険を感じる場合もあるでしょう。このような場合はとても重要なことですから個人情報は慎重に扱うべきことは当然だと思います。
 私たちの測量の仕事は、測量の前に先ず人探しです。土地を確定しようにも、お隣の所有者が不明では、境界の立会確認すらできません。最近では測量費用もさることながら、この人探しに時間と費用が掛かりすぎているように感じます。
 昔は、お隣の所有者がわからないなんてことは、まずあり得えませんでした。大抵はご近所の誰かに聞けば容易にたどり着くことができました。(今思うとそれはそれで問題だと思いますが)
 そんな中、今年になって「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」が成立しました。 要するに、放置された土地が増えすぎて、このままでは近い将来まずいことになると政府も感じたのでしょう。
 これでようやく私たちの業務が円滑に進むと思いきや、個人情報の壁が待ち構えていました。つづきは次回号で!
土地家屋調査士 奥村忠士

甲子園と応援部で学んだこと

 (8月号がお休みだったので、少し話題が古いですが・・・)
 この夏の甲子園は、コロナ感染で(学校としての出場はできたものの、多くのメンバーの入れ替えで)随分な仕切り直しの中挑んだ学校もありましたが、それでも集団感染が確認された学校もある中、出場ルールの見直しで1校も漏れることなく予定していた49校が出場することができたのは、とても喜ばしいことでした。選手や監督が、大会運営側に対して「試合をさせてくださった」という言葉を使っているのも印象的でした。 今高校に在籍している子たちはどんな環境で高校生活を送ってきたか、それはコロナ禍が3年前から始まったことを考えれば想像できること。彼らに「場」があってよかった。
 さて、大学で応援部に入部するまでスポーツに縁のなかった私が野球を見るようになったのは大学野球からなので、甲子園をテレビで見たときにチアリーダーがグラウンドを向いて踊っていることに驚きました。逆に、甲子園(高校野球)を見慣れた人が早慶戦(大学野球)を見ると、チアリーダーが観客席を向いていることに違和感を覚えるかもしれません。大学の応援部では、「自分1人の力なんて大したものではない。応援部員個人が頑張って応援するのではなく、客席を盛り上げて客席の力をひとつにまとめてグラウンドに届けるのが応援部の役目」と習ってきました。それゆえ、チアリーダーは客席を向いています。
 「自分が頑張ることができるなら、もうちょっと頑張って、他人を頑張らせられるようになれ」。私が応援部下級生時代に、当時二十歳そこそこの先輩が年賀状に書いてくれた言葉です。40歳近い今の私にとっても、未だに戒めとして心に留めています。
エール行政書士事務所 行政書士 鈴木亜紀子

発行者
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株式会社CPS総研
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