2025年10月15日発行 第273号

おさない生き方
  還暦を迎えた時には、気持ちの変化を特に感じることはありませんでした。しかし、この1~2年、体調不良や初めての入院、全身麻酔での手術を経験して、日々の暮らしの密度が濃くなったと認識しています。そして、今月ついに65歳となって年金の受給請求をするとともに、その思いを「おさない生き方」として、友人たちに宣言しています。
 この宣言の「おさない」には3つの意味があります。一番目は、「幼い生き方」です。幼い子どものように先のことを心配することなく、正直に、無邪気に本当にやりたいことを実践するということです。また、やりたくないことはやらないというのも大切なポイントです。他人の無責任な評価よりも、本当の喜び、面白さを追求し、好きなことに没頭できる時間の最大化を図ります。
 二番目は、「長ない生き方」です。社長、所長、会長、委員長、議長など、「長」のつく役職については、任期満了退任、新規就任はお断りするというものです。私のリーダーとして能力の欠如については、歴史が証明してくれています。また、私たちのような逃げ切り世代のリーダーは、真の改革者とはなり難く、若者への権限移譲を早急に進めるべきだと考えます。そうは言っても、社会活動から距離を置くつもりはありません。若いリーダーを後方から支援するとともに、現場で汗を流して、次のリーダーの育成に協力していくつもりです。また、「長」がなくなることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれ、得意な専門分野でのスキルアップをしていきます。
 三番目は、「押さない生き方」です。今までは、問題が発生した時には、早く解決しようと奮闘してきました。しかし、今後はその解決方法としての「押す」ことは避けようと思います。「敵と戦う」とか「勝負に勝つ」というような選択は、65歳ではカッコよくないですね。「さらりとかわす」とか「降伏して受け入れる」を、基本的な解決方法としたいと考えています。真の問題解決は、表面的な結果だけではないことがわかるようになったということです。
CPS総合法務事務所 司法書士 加藤健治
弁護士の交渉術 2
 今回も引き続き「弁護士の交渉術」について,お話します。
 確かに弁護士は交渉が上手い,とも言えるのですが,一方で誤解されているかな,と思うこともあります。そんな中で弁護士である私が思う「弁護士が得意な交渉」「得意と言えない交渉」とは?をお話します♪
 1 裁判所の人への交渉は得意
 前回書きましたが,弁護士は一般的に弁護士,調停委員など裁判所の関係者への交渉は得意です。その際には,「社会的に正しい」「公平・公正」と言えるかどうか,という基準に基づいて話します。しかし・・例えば,あなたが交渉する相手は,必ずしも,「確かにそれが正しいですね!」と思ってくれるわけではありません。
 なぜかというと・・・「価値観」は千差万別だからです。
 そして,「交渉」しなければならなくなった,ということは,少なくとも,あなたと相手方とは価値観が異なるところがあったから・・のはずです。考えてみると,国,文化,時代によっても価値観は大きく違うことから,想像できるのではないでしょうか?
 その意味でどんな場面でも,絶対的に「正しい」もの,はないとも言えると思います。
 そして,ここでの注意点は,「裁判」で争えば争うほど,相手方の心を動かすことは難しくなる,ということです。
 なぜかというと,「裁判」は,主に相手方の悪い点を指摘し,相手方の主張を論破して,有利な判決を勝ち取る,というプロセスだからです。この点が「合意をめざす」交渉とは根本的に違うところです。論破された相手からの要望をあなたは,聞いてあげよう,と思うでしょうか?
 しかし,弁護士の場合,この「論破する」ことに慣れてしまっているためでしょう・・・
 実際に相手方の弁護士と交渉していると,交渉段階にも関わらず,こちらをすごく責めてこられ,合意が難しくなってしまう,と感じる場合もあります。それでは,裁判所外でも「交渉」が得意な弁護士の特徴は何でしょうか?続きはまた次回に
岐阜県多治見市大日町21 大日ビル3号
多治見ききょう法律事務所 弁護士 木下貴子(岐阜県弁護士会)
庇(ひさし)を貸して母屋を取られる
  今ではあまり使われなくなった諺ですが、江戸時代に雨宿りに庇を貸したり、行商人に軒下を貸してあげたら、いつの間にか母屋を乗っ取られてしまったと言う、「他人を少しでも甘やかすと付け込まれる」事の例えです。
 昨年スタートした相続登記の義務化に伴い、土地の名義変更がなされるようになりました。その際によくあるケースで、土地を相続しようとしたら、「知らない建物が建っていた」なんてことが時々あります。未登記建物なので、ついでに登記すればいいのですが、そもそも誰の建物って事が問題になり、相続で争うなんて事も多々あります。
 今回は、諺通りになってしまった事例を紹介します。
 大家さんは昔から、少ない家賃で土地・建物を貸していました。建物の老朽化が進み、大家さんは、借主に「好きなように使っていいよ、修繕も好きにすればいいよ」と、とても親切です。ところが調子に乗った借主は修繕どことか増築までしてしまいました。
 そこで今回相続登記の手続きに入り、市役所調査に税務課を訪ねると、「固定資産税は別の方が支払っています。誰の名義かなどの個人情報はお答えできません。」との回答です。確かに税金を納めているからと言って、建物の所有権を主張できる訳ではありませんが、増築を含めた相続登記は一旦ストップしてしまいました。
 まさに諺通りです。私たちは、お人好しで「情けは人の為にならず」が大好きな民族です。苺やシャインマスカットをパクられたり、国家機密レベルの知的財産を持って行かれたりと、恩を仇で返す世の中です。
 私の専門分野では土地の越境です。知らない間にどんどん侵害して、悪意を持って土地を奪ってしまう輩が実際にいます。実効支配されると、取り戻すのに時間と費用が掛かります。取り戻すために掛かる費用が土地の価額を超えるケースすらあります。
 人情と油断は紙一重です、気をつけましょう!
土地家屋調査士 奥村忠士
娘たちの感覚と私の感覚の違い
  長かった夏休みも終わり(高専の夏休みは9月下旬まで)、娘は寮に戻っていきました。夏休み中、娘はお友だちと1泊2日の京都旅行に出かけました。娘の年齢では、同級生同士で宿泊するには親の同意書が必要です。とはいえ、同意書を提出すれば泊まれるのか、様式に指定はあるのかなど、その取り扱いは宿泊施設によって様々です。
 娘たちが候補に挙げたホテルは、女子高生が止まるには暗くて古く値段も高め。「ここなら泊まれるから」とのこと。そのホテルはホームページ上に「未成年者の宿泊について」のページがあり、15歳以上は同意書がある場合に未成年
のみでの宿泊が可能である旨が明示されていました。私は、女子高生にとって良さそうな(綺麗でお得でかつ女子的ポイントが高い)ホテルを探し、「同意書があれば宿泊は可能か、同意書に指定の様式はあるか」を直接電話で問い合わせました。
 彼女たちと私の違いはここにあります。彼女たちは、なるべく「聞く」という行為はしたくない(「調べる」という行為は根気強くする)。ネットに載っていないことは「存在しない」ため、選択肢に入らない。条件に合致したものの中から選ぶ。一方私は、ネットは大まかに見る程度で、疑問点は電話をして直接聞く(ネットで調べる時間がもったいない)。ネット上の情報がすべてとは思わず、「多くの人に当てはまらないことは書いていない」の前提。希望にあったものを探したうえで、条件で絞り込む。
 弊所の現在のご依頼主様は私より年上の方が多く、ホームページを細かく読む方は少ない印象です(直接お話ししてご依頼を決めてくださる)。しかし、世代が変わればものの見方、選び方も変わります。何をどこまで掲載するか、改めて考えさせられた夏休みでした。
エール行政書士事務所 行政書士 鈴木亜紀子

発行者
岐阜県多治見市大日町86番地
CPS総合法務事務所
株式会社CPS総研
東濃相続サポートセンター
TEL 0572-25-4102